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「TERA」を最高画質で快適にプレイできるGPU


   2011年8月18日に正式サービスが始まった,3D MMORPGの話題作「TERA The Exiled Realm of Arborea」(以下,TERA)。
 そんなTERAの公式な推奨環境は,GPUが「GeForce 8800 GT」以上,CPUが「Core 2 Duo E6750/2.66GHz」以上となっている。3Dゲームの進化について行くべく,マメにPCをアップグレードしている人からすればどうということもない仕様だが,3Dオンラインゲームとしてはかなり高い要求水準なのも確かなので,プレイを始めてみて,手元のシステムが力不足だと痛感した人も少なくないのではなかろうか。これからPCを新調してプレイしたいと考えている人のなかには,いま買おうとしているPC(やグラフィックスカード)で大丈夫なのか,心配になっている人もいるはずだ。

 では,「グラフィックスオプションを落とさず,美麗なグラフィックスを堪能する」という前提に立ったとき,どのクラスのGPUを用意すればゲームプレイを満喫できるのか。今回は,2011年8月下旬時点において,店頭で広く購入できるグラフィックスカードを集め,実際にゲームをプレイしながら,「最高グラフィックス設定の最低ライン」を探ってみたいと思う。

CPUはクアッドコアモデルで固定
フレームレートの上限値を無効化してテスト
 
   というわけで,さっそくテストのセットアップに入りたい。
 今回用意したシステムは表のとおりで,CPUは4コア4スレッド仕様の「Core i5-2500K/3.30GHz」を選択した。その理由は,現行のSandy Bridge世代に属し,実勢価格が1万円台後半と安価であるというのが1つ。TERAのプレイ中にWindowsのタスクマネージャからCPUの使用率を確認する限り,4スレッドが処理されるようになっていたため,4コア4スレッド以上に対応したCPUを選ぶべきだというのがもう1つである。

   用意したグラフィックスカードも表のとおりで,Radeonのリファレンスカードは日本AMDから,ASUSTeK Computerの「ENGTX560 DCII TOP/2DI/1GD5」「EAH6870 DC/2DI2S/1GD5」は同社から,GIGA-BYTE TECHNOLOGYの「GV-N550OC-1GI」は販売代理店であるCFD販売からそれぞれ貸し出しを受けたものになる。また,ENGTX560 DCII TOP/2DI/1GD5とGV-N550OC-1GI,そして4Gamerで独自に用意したMSI製品「N450GTS Cyclone 1GD5/OC」は,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルであるため,今回のテストにあたっては,MSI製のオーバークロックツール「Afterburner」(Version 2.1.0)でリファレンス相当にまでクロックを引き下げていることをあらかじめお断りしておきたい(※「GeForce GTX 560」のリファレンスクロックは「設定がない」とされているが,ASUSTeK Computerは定格810MHzとしているので,これに倣った)。
 なお,機材調達の都合により,今回はATI Radeon HD 5700シリーズを用いているが,3D性能周りのスペックはRadeon HD 6700シリーズと同じなので(関連記事),「ATI Radeon HD 5770」は「Radeon HD 6770」,「ATI Radeon HD 5750」は「Radeon HD 6750」に読み替えてもらってもまったく問題ない。

   フレームレートの計測は,4Gamerベンチマークレギュレーションでもお馴染みの「Fraps」で行う。ただ,テスト時点の最新バージョンとなる3.4.6では,TERAが採用するアンチチートツール「nProtect GameGuard」との相性がよくないようで,正常に動作しなかったため,今回は問題なく動作したバージョン2.9.9を使うことにしている。インターネット上でも   「TERAでFrapsが動かない」という報告は散見されるが,その場合はバージョンを変えてみるといいかもしれない。

   ところで,テストにあたって注意が必要なのは,TERAではフレームレートの上限が標準で80fpsに設定されていることだ。
 ポテンシャルの高いグラフィックスカードではフレームレートの頭打ちが発生することが容易に想像できるため,今回のテストでは,この上限――俗にいうフレームキャップ――を無効化すべく,


  1.C:\HanPurple\TERA\S1Game\Config\S1Engine.ini をテキストエディタで開く
  2.[Engine.GameEngine] の bSmoothFrameRate=TRUE となっている「TRUE」を「FALSE」に変更する

   という作業を行った。これでフレームレートの上限値は無効になり,グラフィックスカードの性能をそのまま反映したスコアが出やすくなる

……と書くと,「ならはじめからここをFALSEにしておいたほうがいいのでは?」と考える人も出てくると思われるが,ちょっと待ってほしい。
 というのもTERAの場合,高いグラフィックス設定を行うと,グラフィックスカードに対して一定以上の負荷がかかる状況が長続きしやすくなる。そのため,高負荷時に発熱量の多いGPUを用いる場合にPC内部の温度が高くなりがちで,いきおい,熱によりPCがフリーズしてしまったり,最悪の場合はグラフィックスカードなどが故障してしまったりする可能性があるのだ。もちろん,PC側の冷却能力が完璧ならまったく問題ないのだが,そうでない可能性も十分にあるため,TERAでは80fpsが上限に設定されているのである。

 さらにいうと,MMORPGをプレイするにあたって,80fpsものフレームレートが得られても,あまり意味はない。アクションゲームで1つの目安となる60fpsでも高すぎるほどで,ほとんどの場合は30fps出ていれば十分だ。そしてこれはTERAでも当てはまるため,実のところ,フレームレートの上限を60fpsや40fpsに制限すると,ミドルクラス以上のグラフィックスカードに“手抜き”をさせ,全体の発熱を下げることが可能になったりする。
 ちなみにこの設定は,先ほどと同じS1Engine.iniファイルにある,
MaxSmoothedFrameRate=80

   という項目の「80」を任意の数字に変えることで変更できる。消費電力や発熱が気になる場合は,試してみるといいだろう。

 なお,ini形式のファイル(コンフィグファイル)の書き換えはいわゆるチート行為にあたったりしないが,書き換えは,「ゲームエンジンの基本設定を変更する」ことと同義なので,設定を間違えると,ゲームクライアントが起動しなくなる可能性もある。この点はくれぐれも注意のうえ,試す場合はくれぐれも自己責任でお願いしたい。本稿の内容を試した結果,不都合が生じても,筆者,4Gamer編集部,NHN Japanはいっさい責任を取らないので,この点はご了承のほどを。


   コンフィグファイルの変更に抵抗がある場合は,「Dxtory」などのキャプチャツールを使うと,フレームレートに上限をかけられる場合がある。Dxtoryだと,メインメニューの「アドバンス設定」に「ビデオFPS制限」という項目があるので,ここにチェックを入れ,さらに任意の数値を入れれば,その値が上限フレームレートになるはずだ。
 ただし,Dxtoryも,Frapsと同様,nProtect GameGuardとの相性問題が発生する可能性は捨てきれないので,このあたりは注意しておいてほしい。

街中と移動,戦闘の
各シーンをテスト

  少し話が逸れてしまったが,テストは街中と移動,戦闘の3シーンで行う。
 まず街中は,基幹となる街「ヴェリカ」の自由広場と北通り商店街を周回するコースを5分間走り,その間のフレームレートを2回測定してその平均をスコアとした。自由広場は,ユーザーの露天用売買キャラクターであるホムンクルスが多く配置され,ゲーム中で1,2を争う“重い”シーンだ。筆者が所属するギルドでは――PCのスペックは分からないが――「ヴェリカに行くと落ちる」と嘆くギルドメンバーもいるほどである。

 続いて移動シーンだが,今回はヴェリカから「サボテン村」まで,ペガサスによる飛行移動時のフレームレートを測定する。往路と復路のそれぞれを計測し,その平均をスコアとした。この飛行移動は毎回同じルートで移動するため,同じシーンでの測定が行いやすい。

 最後に戦闘シーンだが,リカノール平野で5分間,ソロプレイでファームゴーレムを狩り続け,その間のフレームレートを追う。ここでも2回実施し,その平均をスコアとした。

 利用したキャラクターはレベル34のバーサーカーで,種族はポポリ。16:9アスペクトのディスプレイを使うユーザーが多いと思われることから,解像度は1280×720&1920×1080ドットの2種類を選択している。

 

最小20fps以上,平均30fps以上が1つの基準
ヴェリカの負荷は“半端ない”

 各シーンのテスト結果考察に移る。レベル34までキャラクターを育てた筆者の実感として,平均30fps,最小20fpsを超えていれば,「快適にプレイできる」と言えるレベルにあるため,今回はそれを基準とし,GPUごとに平均と最小,両方のフレームレートを掲載することにした。いつものGPUレビューとは,グラフの表示が若干異なるので,その点は注意してほしい。

 以下,GPU名の「GeForce」「Radeon」を省略するとお断りしつつグラフを見ていこう。

●ヴェリカ

 まずグラフ1,2は,前者が1280×720ドット,後者が1920×1080ドット解像度のスコアをそれぞれまとめたものになるが,上で示した基準を満たすGPUは1つもない。1280×720ドット時にGeForce GTX 560は最小フレームレートが20fpsを割り込み,HD 6870では平均フレームレートが30fpsに届いていないのだ。1920×1080ドット時にいたっては,平均フレームレート30fps,最小フレームレートが20fpsを超えたものが1つもないという有様である。
 先に筆者は,ヴェリカを「TERAで1,2を争うほど重いシーン」と紹介したが,まさにそうであることは,このスコアからも明らかだろう。

 


   ただ,ここで押さえておいてほしいのは,GPUをより性能の高いモデルへ変更しても,最小フレームレートの改善にそれほどの効果はないということ。例えば,GTS 450からGTX 560に差し替えても2.5fps,HD 6670からHD 6870への差し替えでも3fpsだ。つまり,少なくともヴェリカについて述べるなら,フレームレートの向上を期待してグラフィックスカードを差し替えるのは,あまりメリットのある行為ではないということになる。

 「ヴェリカに行くとゲームクライアントが落ちる」話に関して言えば,今回最も低いスコアを示したGT 520でもテスト自体は問題なく終えられたので,この程度のフレームレートが出ていれば,少なくとも落ちたりはしないということなのだろう。“パラパラ漫画化”を避けたいのであれば,平均20fpsは確保したいところだが,「落ちなければいい」と割り切るのも手かもしれない。
 なお,全体としてはGeForce勢のほうがスコアは高め。TERAはAMDの協力を得て開発されたタイトルなのだが,ゲームエンジンは「Unreal Engine 3」ベースなので,現時点でNVIDIAのほうが最適化は進んでいるというのも,さもありなんといったところである。

●ペガサス

 ヴェリカでのスコアを踏まえつつ,グラフ3,4,ペガサスによる空中移動シーンの結果を見ていくと,平均30fps,最小20fpsの基準をクリアしてくるのは,解像度1280×720ドットでGT 440&HD 6570,同1920×1080ドットではGTS 450&HD 5750ということになる。
 純然たる移動ということもあってCPU負荷は低く,GPUの性能差が,テスト結果を大きく左右しているのも見どころだ。

 

●フィールド戦闘

 最後にフィールド戦闘におけるスコアをまとめたものがグラフ5,6となる。
 ここで基準値を超えてくるのは,解像度1280×720ドットでGTS 450&HD 6570,同1920×1080ドットでGTX 550 Ti&HD 5770となる。Mob(敵キャラクター)の描画やAI処理,当たり判定処理などがあるためか,ペガサスを使った移動時と比べるとさすがに負荷は高めだ。
 

12x7ならGTS 450&HD 6570クラスで快適にプレイ可能
19x10だとGTX 550やHD 5770以上が必要に

 
 以上の結果から,「クアッドコアCPU搭載環境で,グラフィックス設定のプリセットを最高の6とし,ヴェリカのような極端な例においてもそれなりのフレームレートを確保。さらにそれ以外の状況では快適なプレイが可能なフレームレートを維持する」という前提に立った場合,解像度1280×720ドットなら,GTS 450かHD 6570クラスがあれば十分ということになる。いわゆるゲーマー向けPCの最新モデルなら,クアッドコアCPUの搭載はほぼ間違いないので,GPUはこの程度を狙っておけば,ほとんどの局面でストレスなくTERAをプレイできるはずだ。

 一方,解像度を1920×1080ドットまで高めると,GTX 550 TiやHD 5770(=HD 6770)が必要になる印象だ。ただ,このクラスのグラフィックスカードを搭載したPCも,いまなら10万円未満から購入可能。単体グラフィックスカードを買い足す場合でも,価格はかなり下がっているので,それほど金銭的負担は大きくないだろう。

   いずれにせよ,TERAの仕様や,ヴェリカの例を見ても,極端に高スペックのGPUを用意したところで,宝の持ち腐れになる可能性は高い。予算とターゲット解像度に合わせて,適切なグラフィックスカードを選ぶよう心がけたいところである。

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