RMT-WM
RMT-WM

TERA RMT「ICO」と「ワンダと巨像」のリマスター版を迎えて。上田文人というゲームデザイナーは,何を考えて作品を創るのか――日本が誇るゲームデザイナーがみっちり語る2時間


  2000年3月に登場したTERA RMT「プレイステーション 2」(PS2)の興奮が一段落した2001年末に突如登場した,アクションアドベンチャーゲーム「ICO」。そしてそれから4年後,「プレイステーション3」(PS3)発売が見えてきた,PS2最終期とも呼べる2005年11月に颯爽と登場したアクションゲーム「ワンダと巨像」(以下,ワンダ)。足かけ16年間にわたるゲーム業界での生活の中で,わずかにその2作品しか世に送り出していないにも関わらず,掛け値なしに世界的な評価を受ける日本のゲームデザイナーが,上田文人氏である。

  ソニー・コンピュータエンタテインメント ゲームデザイナー 上田文人氏

  そのどちらの作品も,「体力やスコアなどの画面上のインジケータ」「しゃべりまくることによって状況を説明するゲーム内キャラクター」「敵を倒すことで明確に強くなっていく主人公」「プレイヤー同士/対コンピュータなどで勝ち負けを競う要素」「ゲーム中の雰囲気を盛り上げるBGM」など,既存のビデオゲームでの約束事でもあった基本ルールを踏襲せず,まったく新しい「コンピュータエンターテインメント」として設計された。そしてそれは,日本はおろか海外でも――いやむしろ海外ではより強く――称賛と崇拝を持って迎えられ,氏はわずか2作品で,世界に名をとどろかせる一流ゲームデザイナーの仲間入りを果たしたのだ。

  パズル要素の強いアドベンチャーゲームである「ICO」と,ダイナミックなまでに迫力とリアリティを追求した3Dアクションゲームである「ワンダ」は,そのゲームシステムこそ関連性はないものの,儚くて美しいストーリーライン,幻想的なグラフィックス,ファンタジーに徹していながら,どこかにありそうな世界観という,共通の特徴を持つ。

  このことが大きく影響しているのか「アーティスティック」という形容詞を付けられることも多く,自身の作品について公の場であまり多くを語らないため,ファンにとっては半ば神格化された存在で,その思想の多くの部分はベールに包まれたまま今に至っている。

  過去の数々のインタビュー記事――むろん筆者自身の記事を含め――を引っ張り出して読んでみても,既存のゲームの文脈に乗せて話をしようとすると,その言葉は氏にはまったく刺さることなくかわされ,代わりに疑問文を突きつけられ,どちらがインタビューをされているのかよく分からなくなっていることも多い。

  ではいっそ,教えを乞うつもりでインタビューをしてみるのはどうだろう,と思ったのが,遡ること数か月前である。本来であれば,氏の3作目にあたる「人喰いの大鷲トリコ」(以下,トリコ)の発売前後にそのオファーを出してみる予定だったのだが,作品は延期され,そのタイミングを逸してしまった。

  TERA RMT今回,プレイステーション 3で動くようにリマスターされた「ICO」と「ワンダ」が出るタイミングで思い切ってそのオファーを出してみたところ快諾されたのが,このインタビューである。

  ゲームメディアのインタビューである以上,本来であれば「ICO」や「ワンダと巨像」のゲーム紹介を抜かりなく行い,然るべきのちに上田氏の紹介,およびその開発意図について聞いてみるのが筋だが,今回は趣向を変えて「上田文人氏とは何を考えている人なのか」の一端を,何らかの形で表せるような方向で進めてみた。であるからして,ICOやワンダを知らない読者,そもそも上田氏を知らない読者にとっては,いささか置いてけぼりの感があることをご容赦いただきたい。

  以下は,上田氏と行った2時間の「雑談」を,ほぼ余すところなく文字で再現したものだ。話はあっちへこっちへと跳び回っているが,その端々で,上田氏の思想が垣間見える。氏が何を考えて作品を創っているのか,何を重要視して業界に貢献しているのか,その片鱗を,ぜひ感じ取ってもらいたい。

  また,氏やその作品を理解するうえで「ICO/ワンダと巨像 Limited Box」に同梱されているBRUTUS特別編集によるブックレットは外せない。ファンであればもちろんのこと,いまから両作品を遊んでみようと思っている人であれば,ぜひ手に入れておくことをお勧めするRMT

twitter facebook google 0は参加なら

関連記事